No.6 言語・表現・人間関係とオーケストラ

デブ子の話から伊語を上達すること、日本人とつるむ事、
日本人と伊人、その他欧州人との人間関係、等等について
色々考えました。


と、ちょっとおもしろいことに気がつきました。


外国で外国語を勉強し、その言語を使って自分を表現する事。
これはオーケストラに入って楽器を演奏するのと良く似ていると。



例えば、日本語を尺八、伊語をヴァイオリンだとしましょう。
日本で尺八を吹いていた私が、イタリアへ来てヴァイオリンに持ち替える。
そしてオーケストラ(人間関係、社会)でビバルディの「春」を
演奏(自己表現)しなくてはならない。


尺八でもビバルディの「春」は演奏できる、
でもヴァイオリンで演奏しなくちゃならんので、ヴァイオリンの練習を一生懸命する。


尺八仲間と尺八ばかり吹いていては、ヴァイオリンは上手くならない。
でもヴァイオリンを上達させる為に尺八を吹いてはならんということはない。


尺八を吹く事は息抜きになるし、楽しいし、尺八でビバルディの「春」も
なかなかおもしろい。


でも早くヴァイオリンを上手く弾けるようになりたい。
尺八仲間といてはヴァイオリンが上手くなれないからといって、
音程(発音)の悪い、リズムの悪い、ヴァイオリン仲間(伊語を学ぶ欧州人)
とばかりいても上達には限界がある。


一番良いのは、音程良く、リズム良く演奏しているヴァイオリン集団の中に入って、


繰り返しその上手な演奏を聴いて覚えて、みんなの音程と合わせ、リズムを合わせ、
息を合わせて流れに乗って、一緒に曲を作り上げていくことである。


これが一番いい。でもこれを毎日一日中というのは、結構大変である。


一日中耳を澄ましていられるか?集中にも限度がある。


技術が伴っていないうちは、ヴァイオリンでは表現したいことがあっても
表現しきれず、分ってもらえず糞づまりになる。


例えばデブ子にムカつく。この怒りをベートーベンの「運命」
♪ダダダ ダ〜ン ダダダ ダ〜ン
で表すとして、尺八でならすぐできるのに、ヴァイオリンでは
指使いが分らず、ビブラートも利かせられず、すぐに弾けない。


練習せんといかん。でも練習には時間がかかって出来た頃には
怒りもおさまってしまう。


すぐにこの怒りを誰かに伝えてスッキリしたい。
そんなときはやっぱり尺八仲間と尺八だ。
「ブオーん」と一吹き。これでスッキリストレス解消。
ネガティブだった話しも笑い話になる。またヴァイオリンを
楽しめるようになる。


「何あんた?イタリアに来てもまだ尺八吹いてんの?
ダッさーい!私なんかもう、ヴァイオリン オンリーよ」


と言って尺八を吹く人を無視するような人。
あんたは視野が狭い。


何故ならオーケストラにはヴァイオリン以外にも
ラッパもいるし、太鼓もあるし、チェロもクラリネットも、
他には沢山の楽器がいるのだから。


それぞれのパートが呼吸を合わせ、一つになって曲を作り上げていく。
これがオーケストラでしょ。


オーケストラは自分さえ上手けりゃ良いというもんじゃない。
多少下手でも、みんなの音を聞きながらリズムを合わせ
呼吸を合わせ、流れにのって、みんなと一つになることが
大切なんじゃないのかなあ。