No.10 さよなら、ペルカリオファミリー

 ☆ 旅立ちの日 ふたたび


 4月2日。3ヶ月のホームスティも今日でおわり。
 

 朝から荷物をまとめたり、掃除をしたりと、引越しの準備。
 大きな荷物は次の家の大家さんが車で運んでくれるというので
 まずは小さい荷物だけを持って新居へ向かう。


 アパートで大家さんから鍵を受け取り、洗濯機の使い方から掃除用具の場所、
 細々とした台所用品のありか、
 

 鍵の開け方(こちらではこれ重要。建物が古いので立付け悪く、コツがいるのです)
 等の説明を聞いて、4:00に残りの荷物を一緒に車で取りに行く約束をし、
 その後早速、新生活の準備にとりかかる。


 今日からは自炊をせねばならんので、まずはスーパーへ買い出し。
 

 塩、砂糖、オリーブオイルにパスタ、野菜、洗剤、サランラップ
 自分で料理するとなると一つ一つ細かく吟味するので、流して見ていた
 前と違ってなんだかとても楽しい。
 

 「あっ。こんなパスタがある!」
 「塩、0.44ユーロ。安い」
 「パスタとワインはサスガノ品揃えだなあ」
 「この野菜、どうやって使うの?」

 
 スーパーをグルグル何周もしてやっと買い物終了。
 気がつけば、こんなにチャリで持って帰れるか?!というほどの大荷物。


 リュックに詰めるだけ詰めて、チャリのハンドルに袋を引っ掛けて
 ヨロヨロしながら徒歩10分。


 またそれを整理して、置く所に置いて…とやっているうちにお昼過ぎ。
 腹へった。
 イタリア初自炊。メニューは「アーティチョークのパスタ」
 おいしくできました。


 そうこうしているうちに4:00になり、大家さんと荷物を取りに行く。
 まず玄関に置かせてもらっていた荷物を車へ運び込み、
 その後、鍵を返しに家の中へ戻った。
 

 ここを出る時はみんなに会って「ありがとう」を言いたいなと思っていたのだけど、
 なんだか静まりかえっている。
 

「みんな出かけちゃったのかな…。ジャコモも今日は来てないんだ…」
 寂しいなーと肩を落としながら廊下を進み、リビングへ着くと
 たくさんの顔がこちらを振り返り、


 「チャオ!アイ!」
 わぁー。ジャコモもヤスミンもルーベンも、みんないる!!!


 静かだったのは例によって、またみんなでポーカー大会をしていたからでした。
 もうすぐ1歳になるルーベンも、幼児用のイスに座ってトランプを持って
 みんなと一緒にポーカーをしているつもり。


 「みんな、アイは今日からアパートへ移るのよ。さよならよ。」
 マンマの掛け声で、皆はポーカーを中断。
 一人づつさよならのキスをしてくれました。
 

 「マンマ、たくさんたくさん本当にありがとう!!!!」
 「ジャコモ、私の伊語のマエストロよ。遊んでくれてありがとね」
 「おーシッマコ。顔濃いよ。髭が痛いです」
 「二クラ、いろいろお世話になりました」
 「ヤスミン、楽しかったね」
 「ルーベン、チャオ」


 クリクリの目で笑っていたルーベンが、私がいなくなるのがわかったのか、
 私に「だっこして」をしながら泣き出して、
 

 「オー!ルーベン!アイのことが好きなのね」とウルスラ
 ルーベン君、私の為に泣いてくれるなんて!
 うれしいねえ…


 私も既に涙ちょちょぎれていたのだけど、こらえてこらえて
 「みんな、ありがとう!チャオー」
 と別れを告げたのでした。
 

 まさに、”ウルルン滞在記”


 やっぱり家族っていいね。私は赤の他人だけども、みんながいると
 なんだかホッとするよ。
 

 日本を発つ時は足取りも軽くウッキウキで、家族と離れる事も
 「あーせいせいするわー」ぐらいの感じだったのに、この家族とは
 本当に離れ難い。
 

 それだけみんな良い人達だったということ。良い家族に出会えたということ。
 そしてとても良くして貰ったということなんだな。


 ぺルカリオ・ファミリー、ありがとです。


 きっと今後の私の理想のファミリー像となるのは
 このぺルカリオ・ファミリーでしょう。


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 こうして、涙しながらお別れしたわけですが今日から住む家は
 この家から徒歩5分。すぐ近く。
 

 なーんだ! 
 

 それでなくても狭い狭いこのフィレンツェ、どこかで必ず会うはず。
 現に、ルーベンのパパにはココ3日、立て続けに街中で遭遇しています。