No.19 同居人のコバンザメ

☆ 世界共通


2ヶ月の間、共にイタリア語を学んだオーストリア人の
マルゲリータが明日で帰国するので、お別れの
挨拶を言いに、久しぶりに学校へ行きました。


入り口のところでマルゲリータを待っていると
隣の事務所の男性がちょうど私の目の前に出てきて、
パッと目が合ったので、思わず
「チャオ!」と挨拶をしてしまいました。
「しまった…イタリアではこれをしてはいかんのだった…」


しまった、しまったと思いながら、黒い革の大きな鞄と、
10cmはあろうかと思われるぶ厚い本を2冊抱えたまま
出たり入ったりしているその男性を見ていたら、
7年前に死んだ自分の父を思い出した。


弁護士だった私の父も、この人と同じような黒の革の大きな鞄を
持って仕事に出かけていたなあ。いつもはちきれんばかりの
書類とぶ厚い本がつまっていたっけ…。
うちのお父さんみたいだなあ…
なんだか懐かしいなあ。


この人、もしかして弁護士さん?!

でも、この男性はスーツ姿に何故か野球帽。
何をしている人なのだろう。。。
表札を見てみると
「studio legale」と書いてある。
「legale」って何だ?よくわかんないけど、何かの事務所なんだな。



家に帰ってから「legale」を辞書で調べてみた。
「legale;法律の」  と書いてある。
「あっー法律事務所か!!」
ってことはあの人もきっと弁護士さん!


弁護士さんって、どこの国でも似たような雰囲気を持ってるんだな…
イタリアの弁護士さんも、あの黒い大きな革のバック。
世界共通だな。


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☆ 同居人のコバンザメ


新居は4室あり、大家のエル(ペルー人)と
日本人で私と同い年同じ名前の「アイさん」との
3人暮らし。
このアイさんには日本人の彼氏がいて
「一緒に住んじゃってるの?」と思うほど、朝から晩まで
よく家に来ている。


私が引越して来た日も、朝から来ていた。
「ずいぶん早くから遊びに来てるんだな」
と思ったが、寝る前12時くらいにアイさんに
用事があって部屋へいったときもまだいて


「あー今日は土曜日だから泊まり?」


次の日曜日の夜もいて
「今日も泊まる気かい?」


コックをしていると聞いたが、次の月曜日も朝からいる。
「レストランが月曜日定休?」と思ったが
次の日も次の日もいる。


「なんだかなー」
もしかして、エル(大家)に黙って一緒に住んじゃってるんだろうか。
いや、それは不可能だ。
なんせエルはチェック厳しいし、うるさい。


「お仕事は?」と聞いてみると
もうすぐビザが切れるのでどこにも雇ってもらえない
のだという。


よく観察していたら、どうも一緒に住んではいないようだが、
朝からやって来て、外へ出るときも何をする時も彼女と一緒。
まるでコバンザメのように彼女に張り付いているのである。


彼女のアイさんはというと、とても世話好きな人のようで
手取り足取り、何でも先回り先回りして面倒を見ている。


二人がよければそれでいいのだけど、
「なんだかなー」とついつい思ってしまう。


他にやることはないのかね、君!と言いたくなる。
男子たるもの、それでいいのか!


働くでもなく、勉強するでもなく、彼女の行くとこ行くとこ
へついていって、まるでそれじゃ、お母さんがいないと
何もできない3歳児のようじゃないか。


いい歳してるんだから、やることがないならサッさと
日本へ帰って働きたまえよ。なさけないやっちゃなー。


大家のエルは家をあけていることが多いので
なんかこのカップルと私は同居しているような感じ。
女性オンリーの家なのに朝からいられると
なんか落ち着かない。


もし、これが自分の彼氏だったらどうだろう。
「いつも一緒にいられて幸せ!」と思うのだろうか。
イヤ…こうまでピッタリだとうっとおしくなるだろうな。


それに、自分の世界を持っていない人なんて嫌だ。
私の知らない世界をもっていて、そこで生き生きと
何かをしている人の方が私はいいな。


しかも、こう彼女にべったり、おんぶに抱っこな人って
出世しなさそう…。


彼女の方がしっかりしすぎていて、
何でも先回りしてやってあげちゃうと、彼は
楽かもしれないけど、彼の能力というか可能性を下げることに
なるのではあるまいか。


同性の私でさえ、アイさんが何でも先回りして気をつかって
くれたり、話も先回りして
「〜ってことね」「〜なんでしょ」とやられると
なんかやる気が失せてくる。


日本では
「彼が全然連絡くれなーい」と嘆いている女の子が
多かったけど、そのくらいがちょうどいいのかもよ。


「亭主元気で留守がいい」
まさにコレ。