No.23 ヨーロッパは怖い所

☆ ヨーロッパは怖い所



イタリアに来る前、知人に
「何年か前、ヨーロッパで日本人の女の子が
洋服を試着するのに試着室へ入ったら、そこがトラックと
繋がっていて、試着室ごと誘拐されるっていう事件が
2回くらいあったんだよ」


「私、それ聞いて以来ヨーロッパでは
絶対試着室を使わない事にしてる。怖いよね〜!
何があるかわかんないよ、ホント。気をつけてよ」
と聞かされた。


「そんな試着室ごと誘拐するなんて、お店の人もグルってこと?!
なんていうこと考えるのかね!こわいわー」
恐ろしい話である。


「そうか、そうか。じゃ私もイタリアへ行っても試着室は
避けておこう。 やっぱり日本人は狙われるんだな。
怖い所だなあヨーロッパも…」
こう思ったものでした。


ところがフィレンツェに来てみて、そんな方法で誘拐するのは
到底無理な話だなあ…とわかりました。


だいたいお店が立ち並ぶ街中は車が入れなかったり、
入れても道が凄くせまい。
試着室とつながるようにトラックを建物に入れ込むことなんて
絶対無理。


しかも建物自体、築100年とかが多いから、工事して
改造しようったってそうはいかんでしょう。
他のヨーロッパの都市だってどこも同じようなものなんじゃ…。


この知人の話は、繁盛しているユダヤ人の店に対する嫌がらせの
デマで何年か前に流されたものだと、後になってわかりました。


実際に街を見て知っていれば
「そんなのウソに決まってんじゃん」
と判断できる話でも、聞いただけでは
「うわーなんちゅう恐ろしい!ヨーロッパは怖いとこだなあ」
ということになってしまう。


「百聞は一見にしかず」


やっぱりなんでも実際に自分の目で確かめるということは
大切だな。


他にもこんな事を聞いた。
「イタリアの男の人は、あまりかっこよくなくてハゲとちんちくりんしかいない。
みんなすぐナンパしてくる」


フィレンツェにはハゲはいるが、ちんちくりんは見かけない。
変な人は確かにいるし、ナンパしてくる人もいるけど
言われたほどでもない。


ショーウィンドウにワイングラスを持って座っている男の人
がいて、こっちはマネキンも男前だなあと思ったら
本物の人間だったこともあるくらい、かっこいい人もいる。


マンマの長男、濃っいー顔のシッマコさんもハゲじゃなく
ちんちくりんでもなく、とてもいい人だった。


ジャコモと一緒にみんなでアニメを見ているとき、
楽しい場面になるとシッマコは必ず誰かといちいち顔を見合わせながら
「ウフフフ」と笑っていて、なんてかわいいのだろうと思った。


日本の小学生を持つお父さんだったらどうだろう。
子供番組を一緒に見てくれるかな…
顔を見合わせながら笑ってくれるかな…




その人にとってはハゲとちんちくりんだけに見えても
私には違う。
人それぞれに違う体験をし、違う感想を持つってことだな。
だからやっぱり、何でも自分でやってみなくちゃわからない。


「百聞は一見にしかず」
うまいこと言ったもんだな。