No.25  おばあちゃんの涙

イタリアへ来てから、電話はしても一度も親には手紙を送った
ことのない私ですが、もうすぐ87才になる
田舎の祖母にはマメに手紙を書き、この「フィレンツェ便り」
もプリントアウトしてまとめて送ったりしていました。


先日、その祖母からはじめて返事がきたのですが、
読んでいたらなんだか涙が出てきてしまいました。。。


「愛ちゃん、度々お手紙ありがとう。楽しく読ませて頂きました。
そちらに行かれてはじめは風邪にやられ、
大変つらい目に遭い、お察しして可哀相で涙が出てしまいました。
そんなに我慢したなんて泣けてしまいます。
お世話になった御宅がいい方だったのは有難かったでせう…」



確かに確かに、はじめの頃はホントに辛かった…。
こんなに身体が適応するまでに時間がかかるなんて
思っていなかった。
寒さと体調の悪さと、(当り前だけど)言葉のできない
劣等感の中で涙をチョチョぎらせながら
いつも「負けてなるものか!」と
自分を励ましていました。


でも、おばあちゃん、そんな私の辛さなんて
こうして春になって暖かくなったらどっかに
飛んでいってしまうくらいにモノなのですよ。。。


そんな私の為に涙を流してくれるなんて、
私のほうが泣けてきてしまいます。


人の家族を見て「家族っていいな、いいな」と
言っていた私ですが、こんなにも私のことを思っていてくれる
家族が私にもいることをスッカリ忘れていました。


バカです。
自分のバカさ加減にあきれます。



祖母は他に、日本は災害続きであること、
地元でもちょっと大きな地震があったこと、
もうすぐ法事があること等々を知らせてくれました。


それから、自分は腰が痛くて立っていること歩くことが
不得意になってきてしまい、車を使わなければどこへも
行けず不自由だということ。


忘れ物をよくして、探し物ばかりしてなかなか見つからず
自分が自分で嫌になってしまう。


情けない老人になってしまってタメ息ばかり出る。
そんなことが書いてありました。


身体の自由が効かなくなって、動けば疲れるし
家にいれば探し物ばかりしていて、楽しいことも
そうそうなく、タメ息の毎日を過ごしているのかな
と思います。


もう歳が歳だけに、探し物が多くなっても当り前。
でもきっと側にいる人には
「おばあちゃん、また探してるの?」
とか言われて、がっかりしてしまうのでしょう。




もし、自分が老人になった時、身体の自由が効かなくなって
家にこもりっきりになったらどうでしょう。


今でさえ、働きもせず勉強もせず、ただテレビばかり見て
何日も過ごすと、気が狂いそうになってくる。


まだ自分で行動できるうちは、じゃ気晴らしに外へ出掛けようとか、
ごはんでも食べに行くかとか、テレビ番組もあきたからビデオでも
借りてくるか…といろいろできる。


でも、それができなくなったら、どうだろう。
何でも人に頼まなければならない。


友達と会っておしゃべりするといっても、田舎だから
一軒一軒が遠くてなかなかそうもいかない。


楽しみは再放送の「水戸黄門」と「暴れん坊将軍
ということになる。


老人になっても何かをして楽しく笑って1日を
過ごしたいものだなあ。


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フィレンツェのお年寄りは結構長生きな人が多い。


こんな寒いところで、塩分の強い食事、強いコーヒーで、
長生きの人が多いのは意外。


イタリアののんびりした感じがいいのかな。
マンジャーレ(食べて)カンターレ(歌って)アモーレ(愛して)
で楽しく過ごしているのがいいのかな?


こちらの人は結構家族の絆も強いように見受けられる。


最近では日本と同じで離婚率もとても高いようだけれど、
家族を大切にするという姿勢は日本より強いようである。


そして若者がおとし寄りを大切にしている。
よく若い男の人がおじいちゃん、おばあちゃんの
手をとって歩いているのを見かける。


語学学校に行っていた時、休憩時間は近くのBARで
お茶をしていたのだが、その時間いつも来ている
おじいちゃんがいた。


このおじいちゃんの孫なのか何なのか、わからない
けれど、帰るときにはめちゃめちゃイケメンのお兄さんが
必ずタクシーを拾ってきて、そろりそろりとおじいちゃんの
手を引いてタクシーに乗せてあげていた。


「感心なイケメンだなあ…」と見るたび思って
イケメンがさらにイケメンに感じてしまったものでした。


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老人になって楽しく笑って過ごすことは、きっと
長生きの秘訣だろうなと思う。
その為には、やっぱり家族の存在というものは
何よりも大切になってくるだろう。


もし私にマンマの孫”ルーベン君”のような赤ちゃんがいたら
きっと、私の祖母はこのひ孫の成長を楽しみに、遊びに来るのを
楽しみにして日々を過ごすようになるのだろうなあ。


なんか、そんなことを想像するとあの”ぺルカリオ・ファミリー”
の様にみんなが笑顔に包まれている図が頭に浮かんでくる。


私が結婚して、子供を産んで、いい家族を作って
幸せになることは、まわりの人にも幸せを
運ぶことになるのだろうな。
そういう”まわりにも幸せを運ぶ結婚”ができたら
いいなあ…。そして早く祖母にひ孫を見せてあげたいなあ…。