No.26  親子モンスター

ちょっと前、プロフェッソ−レやアンナ先生、その他
生徒達が、しきりに"モストラ"がどうの…とか
"モストラ"があるから…と
"モストラ""モストラ"という
言葉を口にしていました。


"モストラ"の意味をしらなかった私は
「何だかわかんないけど、もうすぐ"モストラ"というのが
あるんだ…。"モストラ"って何だろ?」
辞書で調べてみると

Mostro ; 怪物、モンスター

はっ?怪物?
先輩が親子モストラがどうのって言ってたけど、
親子モンスターってこと?!
なんじゃそりゃ?!


もう一度よくよく辞書を見てみたら、
私、一文字間違って調べていました。。。。
Mostro(モストロ)ではなくMostra(モストラ)!

Mostra : 展示会、展覧会

一文字違うとモンスターになってしまうのですね。



プロフェッソ−レと娘アンナ先生の親子二人展。
この展覧会が、お2人の所属するフィレンツェ
アーティスト協会で企画され、昨日から始まりました。
昨日は私もそのオープニング・パーティに行ってきました。



私はこの親子モストラがあると聞いたときから、
とてもこれを楽しみにしていました。


プロフェッソ−レとアンナにとっては、これまでにも
何度となくこういった発表の機会はあっただろうから、
そうそうたいしたことではないのかもしれない。


でも、私にとっては何と言うか、初めての身内の'晴れ舞台'
という感じ。
たくさんのフィレンツェの人々がプロフェッソ−レの
作品を見に来るんだな…と思うと、
も〜ワクワク!!


プロフェッソ−レの作品は動物や昆虫がモチーフの
小ぶりなブロンズ像多数。


このモストラの為に、あるお金持ちの夫婦に
買い取られていた作品を3点、貸し出してもらったらしいのですが
それが学校に届いた時、先輩が
「とてもいい作品だからよく見ておくといいよ」
と言うので私ものぞきに行きました。


プロフェッソ−レが一匹のカエルのブロンズを持って
ウロウロしていたので、


「プロフェッソ−レ、カエル、かわいいですね」
と言うと


「でしょ。これはね、ちょっと見て。こうやって
ここに入るんだよ」


それは白い石の上でキスをしている2匹のカエルを、
石の下で見上げているもう一匹のカエルちゃん
でした。


「ここで2匹のカエルがバーチョ(キス)してるでしょ。
下でこのカエルはそれを見て
『わー!やめてくれ!バーチョしないでくれ!!』って
泣いてるんだよ」


プロフェッソ−レが透き通ったブルーの目をキラキラ
させながら、この作品の物語を語って聞かせてくれる。


こうやって作者から直接物語を聞くと、
なんだか一気に見方が変わる。ぐ〜んと広がる。


「あーそうか。だからこのカエルちゃんはちょっと
悲しげな顔をしてるのね」


とても愛らしく感じて、私もプロフェッソ−レと
一緒に笑ってしまいました。


プロフェッソ−レのイメージが私の頭の中まで
進出してきて
「おもしろいでしょ」
というプロフェッソ−レの生き生きとした思いを
私も体験した感じ。


他にもプロフェッソ−レは、花が3本立っていてそのまわりを
風のようにグルッと円が囲んでいる作品の説明も
してくれました。


「10年、20年、30年、あとはジュ〜〜ウッ!」


ちょっと前後の意味がわからなかったので、私の
イメージですが、たぶん
「10年目の花が咲き、20年目の花が咲き、
30年目の花が咲き、あとは風のごとくジュ〜ッと過ぎ去る」
そんな感じかなと思いました。



プロフェッソ−レの作品の動物達はとても愛嬌がある。
そしてプロフェッソ−レがそれを語るときは
とても生き生きとした表情をしている。


きっとプロフェッソ−レは動物達を
「かわいいね。おもしろいね」
と思いながら作っているのだろうな。


これはNO.6の「言語・表現・人間関係とオーケストラ」
で言うところの、ヴァイオリンにあたるものが
プロフェッソ−レではブロンズということになるのかな。


プロフェッソ−レがブロンズを使って奏でた
動物達とのコンチェルト。
いい音色が聞こえてきます。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さて、この親子モストラ、オープニング・パーティ。


ギャラリーはシニョーリア広場に面する建物の2階。
眺めのいい、こぢんまりとした所。


そこにプロフェッソ−レの作った動物のブロンズ像や
アンナの七宝の作品がずらりと壁に飾られ、
たくさんの人々、中にはテレビ局のカメラマンの姿も。
もちろんプロフェッソ−レとアンナの家族も全員集合!


それから学校の下の階に住む、プロフェッソ−レのお友達
シニョール・ピットーレ(ピットーレとは画家の意味。
よく挨拶をするのですが、名前を知らないのでそう呼んでいます)
も。


いつもより元気そうで、そしてとても楽しそうなプロフェッソ−レ。


お客さんたちは作品を見るよりもおしゃべりに夢中。
もうちょっと作品を見ようよ、作品を…。


直前まで一生懸命に作っていたアンナの七宝作品。
いかにも西洋風な色合いで、個性的。


アンナはお父さんに似なかったのか、あまり器用では
ないらしい。
大雑把で大味な感じの作品が多い。


4年学校に通っている先輩達は
いつもアンナの作っているものを見て


「どうせならねえ、もうちょっと凝ったものにすればいいのにねえ」
「彼女の審美眼はわからない…」
「もうちょっと、丁寧にすればいいのに…」


と辛口批評。
私が見たところ、確かに七宝の技術は先輩達のほうが
ずっと上手。


でもアンナの作品もきちんと額装されて、こうして
ギャラリーで並べられてみると、個性的なアンナ・ワールドが
出来上がって結構おもしろい。



下手でも何でも作品を作って世に出せば、色々な人の目に
触れるということで、よくも悪くも批評されることになる。


誰かは良いというだろうし、誰かは悪いと言うかもしれない。


でも、どんなにスゴイ技術を持っていても、表現したものを
発表しなかったら、宝の持ち腐れになってしまう。
発表したもの勝ちだな。